自らの樂焼きの作品にふさわしい鑑賞の空間として、樂吉左衞門さんが自らこだわって設計された樂吉左衞門館。 予想以上の静謐でゆとりのある異空間が広がっていました。
やっと念願の樂吉左衞門館を昨日観に行ってきました。
今年の2月24日にNHK教育TVの新日曜美術館で放送された樂吉左衞門館の完成までのメイキングドキュメンタリーを見て、これはすごいなと感じ、一番いい時期のGWの間に観に行こうと決めてました。 やはり、展覧会を堪能するには平日の人出の少ない時期に限ります。 昨日は、GWの間の平日だったので予想通り人出もまばらで、琵琶湖のほとりのなんとものんびりとした雰囲気の中で時間的にもゆとりを持って鑑賞することができました。 でも、バスが1時間に1本あるかないかの状況で、電車とバスの乗り継ぎが良くなくて、着くまでが遠い道のり。 やはり、クルマで行くのに限るロケーションですね。
樂吉左衞門館は佐川美術館の一角にありますが、ちょうど天井が写真のように葦(よし)の茂る水面と現代的な茶室になっていて、地下の暗い空間に階段で下りていくような演出になっています。
地下に降りると、大きな広間があり、そこに降りると心理的にも現実の空間とは異なる心持ちになってしまいます。 そこから、いくつかの仕切られた展示室に移動していくのですが、中はほとんど真っ暗な中に作品だけがスポットライトで浮かび上がる展示になっていて、作品と雑念のない形で向き合うようになります。
入り口の壁には大振りの竹筒に生けられた花一輪が誘いの役割を担っています。
伝統的な樂焼きの中でもとりわけ十五代樂吉左衞門さんの作品は、男っぽくて豪快で現代的な強さがあると思います。 そんな作品の持つエネルギーが、この贅沢で静謐な空間と呼応して、茶道の何とも象徴的な精神に導いてくれるような心持ちになってしまいます。
そして、数ある茶碗にはそれぞれ漢詩の一部を引用したかのようなタイトルが付けられていて、一見無造作であるかのような茶碗の色柄やマチエールがその表す意味を象徴しているように見えてきます。 そうして、小宇宙である茶碗の深遠なる質感と対峙しながら、心の中は壮大な自然の風景を巡るようになっているようなのです。
象徴の美である日本美術の精神が、圧倒的で現代的な形で息づいている空間でした。
※タイトルの写真は、ミュージアムショップで買ったポストカードをわが家の和室の壁に貼って撮影したものです。
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